船隊整備のポートフォリオ

船隊整備は、まず、船型の観点から必要な船のスペックと必要隻数、また複数の異なったスペックの船を盛り込む場合、その比率などを決定します。つまり、これが、船型のポートフォリオです。

次に、用船コストの観点では、主に3つの船の調達方法、①新造、②中古船の購入、③借船の中から、どれを選ぶのか、或いは複数の異なった調達方法を使う場合は、その比率を決定します。つまり、これが、用船のポートフォリオです。

ここでは、用船のポートフォリオについて更に深く考えてみましょう。この目的は、船隊の用船コストを下げること、そしてリスクを低減することです。新造と中古船の購入は、共に船を所有することになるので、用船のポートフォリオは、最終的に所有船か、借船かの2つに絞られます。

所有船の用船コストは、仕込みで失敗しない限り、自らが所有する資産なので競争力が有ります。しかし、荷動きが停滞した時、船隊を簡単に縮小することができないリスクがあります。一方、荷動きが活発化した時でも用船コストは変わらないので、利益は市場の変動に翻弄されません

次に借船の用船コストは、オーナーの利益が含まれるので競争力が有りませんが、荷動きが停滞した時、契約終了で返船し船隊を縮小することができます。また反対に、荷動きが活発化し輸送需要が増えると、それに伴い借船価格も値上りするので、利益率は低く、利益は常に市場の影響を受けます。

 

理想的なポートフォリオは、所有船と借船を上手く組み合わせることです。つまり、造船価格や中古船価格が下がったタイミングで固い輸送需要に対応する船を調達し、一方、借船で輸送需要の変動に対応する船を調達することです。

船型のポートフォリオと用船のポートフォリオが決まった後は、単純に船隊の用船コストが低減するように、安い用船コストの船が出てきたら、高い用船コストの船と入れ替えて、ポートフォリオを組み替えて行きます。借船と所有船を入れ替えることも、借船同士を入れ替えることもあります。また、輸送需要は常に変化するので、一旦決めた船型のポートフォリオも変化するかも知れません。適時、船型のポートフォリオも見直されます。

この作業を丹念に行うことによって、徐々に船隊の用船コストは下がって行きます。

しかし、多くの企業は、船隊整備に苦労しています。その理由は時間です。船隊整備で効果を実感できるのは、短くても10年後です。この間、担当者レベルでも経営者レベルでも、人事異動が起こり、初期に設定されたポートフォリオは引き継がれず、その時々の最適解で船が仕込まれ、船隊整備は崩壊します。

船隊整備が行われないブレイクバルク事業は、船型がいつまでも輸送需要にフィットせず、また用船コストも高止まりするので、利益率が上がりません。

したがって、船隊整備は、経営者が最も注力すべき仕事のひとつであり、経営戦略の根幹であると言えるでしょう。