「海賊って本当にいるの?」
航海士という職業に就いてよく聞かれる質問の一つが、この問いです。
海賊と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
ワンピース?パイレーツ・オブ・カリビアン?
海賊は決して漫画や映画の中だけの話ではありません。
歴史上、日本においては村上水軍のような海賊、北欧においてはバイキング等、各地で実在していましたが、今日においても世界中、主として東南アジアやアフリカの一部で海賊は実在しています。例えば、マラッカ・シンガポール海峡、ソマリア沖・アデン湾、ギニア湾、セレベス・スールー海などにおいては特に、海賊被害の情報が入ってきています。
現代の海賊は、小型のボートや漁船に乗り高速で接近し、ナイフだけでなく銃やロケットランチャー等で武装して、様々な方法で商船の金品、機械や装置を奪おうとしてきます。また、船ごと乗っ取り、乗組員を人質にして身代金を要求するといったこともあります。
そのような海賊からの襲撃を避けるため、本船上ではいろいろな対策をしており、また、陸上からの支援体制、海上における防衛体制も整っています。
例えば本船上では、船の縁にフェンスを装備する(有刺鉄線のような剃刀型のワイヤーを巻き付ける)ことで海賊が容易に乗り込んでこられないようにしたり、放水用のホースを設置し海賊が接近してきたときに高圧射水をすることで海賊ボートの転覆あるいは乗り込みを妨害したり、船員は日ごろから緊急時用の訓練も実施しており、他にも多面的な対策を施しています。
陸上のオフィスにおいても、緊急事態が発生した際の体制は整っており、防衛体制としてさらに、護衛艦や軍用の飛行機により海賊が発生する海域は監視されており、航行船舶との連絡体制ができています。
商船にとって海賊は脅威になりますので、現場の船側としても、陸上から支援しているオフィスとしても、関係各所の力を借りながら対策をしているのです。
海賊は海上輸送の要所に出没しており、商船は海賊が存在するリスクの高い海域を航行しなくてはならないこともあります。
“船を安全に運航し、貨物を安全・確実に輸送する”という船乗りの仕事の中には、海賊や盗賊から船舶、貨物、乗組員の命を守る、ということも含まれているのです。
ちなみに、『キャプテン・フィリップス』(2013年のアメリカ映画。トム・ハンクス主演)という映画は海賊事件に関する実話をもとにした映画(私も3回ほど鑑賞しました!)ですので、興味のある方は是非ご覧ください。