お久しぶりです。

 

今回は船の通信設備、環境についてお話していきます。

 

船ではどのようにして陸と通信を行っているのでしょうか。

ご存じでは無い方も多いかと思いますので、過去の通信方法から現在の通信方法に至るまで過去から現在にどのように変化してきたのかお話していきたいと思います。

 

船陸間通信の始まりはモールスがモールス信号を発明して以来、短波を利用した通信を中心に使用してきました。

モールス信号の代表的な信号は・・・― ― ― ・・・(短音3回 長音3回 短音3)の遭難信号です。この通信方法(モールス信号)は世界的に有名なタイタニック号の映画でも使われている場面がありましたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。

 

その後、インマルサット通信システムの運用が開始されました。このインマルサット通信はデジタル化され通信速度が高速化しとことにより陸上とのインターネット接続が可能となりました。その後、インマルサットフリートブロードバンド(FBB : Fleet Broad Band)の導入により通信速度がより高速化されました。インマルサットシステム以外でも、VSAT(Very Small Aperture Terminal)の船陸間衛星通信への参入によりインマルサットFBBに引けを取らない高速通信が提供されてきました。また、最近ではイーロンマスク

が開発した次世代衛星通信スターリンクが出てきました。

 

では、前述で紹介した現在の船陸間通信の主流であるインマルサットFBBVSATではどんな違いがあるのか。

 

まず、インマルサットFBBの適用範囲は極海域を除く全世界の海域です(図1)。上空38,000kmに配置された3個の衛星のグローバルなビームを利用し極地方を除く地球上のすべてのエリアで通信を提供しているのに対しVSATは各事業者が独自に打ち上げた衛星を使用しています。その為、これまでは各事業者が打ち上げた衛星のカバー内でしか使用ができない制限がありましたが今では別々の事業者間でローミングを実施することで全世界の主要なエリアがカバーされるようになりました(2)

1 インマルサットFBBカバーエリア

2 VSATカバーエリア

 

また、インマルサットFBBの周波数帯よりもVSATの周波数帯の通信スピードの方が高速であると言う観点から船陸間の通信速度向上、洋上でも船員各々が通信可能になったことによる船員の福利厚生の観点からインマルサットFBBからVSATに導入を切り替える船社が増えています。

 

ここまでのお話ですとVSATの方が良いと思われますがVSATは雨や構造上の障害物の影響を受けやすかったり、ビームが切り替わる際に多少のタイムラグが生じてしまうことがあります。しかし、このような問題も実運用上大きく影響するものではないです。

 

これまでの低速で当たり前、通信できれば良いと言った考えからVSATやスターリンクの導入によって船内機器モニタリング等を陸上側からできたり、今後の海運のDX化の促進に繋がっていくと思います。

 

インマルサットFBBVSATの違いや、前述で少し触れたスターリンクのお話を更に深堀りしたいところですが、今回は長くなるので次回以降にお話ししていきます。

 

 

最後に各船社は船員を確保する事が難しい状況となっていると思います。単に船員の数を確保するだけでなく、安全な運航を維持するために一定以上のスキルを備えた船員の確保が重要です。このような状況の中、良質な船員を確保、保持するには船員が快適に船上生活を送れるように船上におけるインターネットをはじめとする通信インフラの整備が非常に重要になっています。船員がストレスなく陸上の家族と電話、メールのやり取り、インターネットに自由にアクセスできる環境を整えることが、質の良い船員の確保、保持に繋がると私は考えています。

 

また、昨今高専時代の同期にお話を聞いていると、船上でのインターネット環境はまだまだ陸上に劣り快適にインターネットを使用できるとは言い難いと言った意見を多く聞きます。

今後、船員が増えて行くためにも更に通信設備が整っていって欲しいと願っています。

  

日々勉強!!

 

引用・参考文献

1)海洋ブロードバンド衛星通信の取り組みja (jst.go.jp)

2)最近の船陸間衛星通信技術の動向と将来展望ja (jst.go.jp)

 

村上 琢磨