船体に描かれた謎のマークの正体は

 

 

みなさんは、船体においてこのようなマークを見たことがありますか?

 

遠くからではわかりづらいですが、船を近くから見てみると、様々な文字やマークが描かれていることがわかります。今回はそれらの文字やマークがどんな意味なのか、いくつか例に挙げて簡単に説明したいと思います。

 

まず、1枚目の写真について。これは満載喫水線マーク(フリーボードマーク)といい、船体中央部、両舷側に表示されています。船は喫水が過大になると甲板上に波が打ち込みやすくなったり、復原性にも影響を与え、最悪、転覆のおそれも出てきます。

そのような危険な状態を避け、安全運航を確保するため、国際条約が締結され、船毎の形態や構造に応じた満載喫水線、つまり喫水線の上限を統一的に定め、上限よりも喫水を深くしないように決められています。

ちなみに満載喫水線は、世界の海面の帯域(航行する海域)や季節によっても異なり、TFは熱帯淡水満載喫水線(熱帯淡水乾舷)Fは夏季淡水満載喫水線(夏季淡水乾舷)Tは熱帯満載喫水線(熱帯乾舷)Sは夏季満載喫水線(夏季乾舷)Wは冬季満載喫水線(冬季乾舷)WNAは冬季北大西洋満載喫水線(冬季北大西洋乾舷)を意味します。

 

写真の中央部にあるNKという文字は、ClassNK(日本海事協会)のことです。ここには、どの組織が当該船舶の検査を実施し、認定したかを示しています。内航船はここの文字がJG(Japanese Government、日本国政府のこと)であったりします。

 

2枚目の写真の左側がスラスターマーク、右側がバルバスバウマークといいます。

スラスター(サイドスラスター)とは、水面下の船体横に小さなトンネルをあけて、なかにプロペラが付いている推進装置です。船の横移動が可能になるので、離着岸の際などにスムーズな操船ができます。スラスターマークとは、そのスラスターがついていることを示すものであり、他の船舶や作業者がスラスターの存在を認識し、安全に接近・作業できるようにするために表記されています。

バルバスバウとは、船首海面下の船体先端が突き出した形状をしているものをいいます。これは、船が海水から受ける抵抗(造波抵抗)を減らすことにより航行性能を改善させ、燃費効率を向上させる目的があります。海面上から見えない部分が多いため、他の船舶や障害物との衝突リスクを減らす目的で、海面下の船首の形状を表すバルバスバウマークが船体に設けられています。

これは、タグボートマーク(プッシュライン)といいます。

タグは、船体のどこを押してもいいというわけではありません。馬力の強いタグで縦強度材だけの箇所など、強度が強くない場所を押すと、船体に凹み等のダメージが発生することもあります。したがって、タグが船体を押してもよい場所を明記しているのがタグボートマークです。

 

船首には、その船の名前が書かれています。(写真左上)

船尾には、船名のほかに、船籍港といって船の本籍地にあたる港の名前が書かれています。

 

(写真右上)

 


喫水線(ドラフトマーク)

喫水計測のため、船首・船体中央・船尾には両舷側に喫水を示す目盛りがついており、これを喫水線といいます。船が水上に浮かんでいるときの水面と船体の交わる線であり、船体がどれくらい浮かんでいるか、沈んでいるかを示す目印です。適切な喫水線を守ることで船の安定性と浮力が保たれます。

 

今回いくつかのマークを例に挙げましたが、マークは他にもあります。

 

船を近くで見る機会がありましたら、是非確認してみてください。