お久しぶりです。
今回は前回お話した船陸通信に関連し続きとしてお話していきます。
まず、船舶には船員個人使用の為のインターネット環境だけではなく、船舶には搭載しておかないとならない無線機器がたくさんあります、そんな無線機器についてお話していきます。
まず初めに、GMDDSSと言う言葉をご存じでしょうか。GMDSSとは(Global Maritime Distress and Safety System)の頭文字を取ってGMDSSと呼ばれます。日本語に訳すと(全世界的な海上遭難・安全システム)と言い、陸上と海上が一体となって通信網を構成する通信システムです。どんな海域で遭難しても必ず陸上の救助調整機関や付近航行の船舶が遭難警報を受信し、通信できることが特徴です。
そんなGMDSSはなぜ導入しようとなっていったのか。
GMDSS導入以前は客船及び総トン数1600トン以上の貨物船にはモールス電信システムを義務化しモールス資格を持つ無線通信士が乗り組む必要があり、客船及び総トン数300以上の貨物船は無線電話装置も義務付けて、全船舶に共通した遭難通信ができるようにしていました。
しかし、GMDSS以前の通信には不確実性があり、またその通信可能範囲が、100~150海里だったことから、遭難船の救助は遭難地点近傍を航行中の他船に限られていました。この状況を改善するためにいろいろな方法がとられ困難でありましたが、最近の人工衛星による通信やデジタル通信の技術等、最新技術の導入によって、気象その他の干渉に関係なく、確実に遠距離まで自動的に送受信できるようになり、これらの技術を導入して新しい遭難通信システム(GMDSS)ができました。
GMDSSの目的は救助調整機関が最小の遅延時間で救助作業ができるように、船の遭難の発生が素早く通報されると共に、遭難者の発見を迅速に行うことです。
GMDSSにおいては船に搭載することが要求される装置、その船の行動海域によって定められています。海域は次のように定められています。
A1:陸上にあるVHF沿岸局の通達範囲(その局から20~30海里)
A2 : 陸上にある中波(MF)沿岸局の通達範囲、但しA1海域を除く
A3 : 静止型通信衛星の通達範囲、但し、A1,とA2海域を除く
A4 : A1, A2, A3区域以外の全海域
説明及び上記図の様に海域が設定されている。
また、海域毎に搭載要件が異なる。主な搭載義務のある機器を紹介していきます。
上記図のものが基本搭載要件となっているものである。
GMDSSに用いられる無線通信システムでの遭難通報の伝達方法は、地上通信ルート経由と衛星通信ルート経由の2種類があります。地上通信には中波無線電話、短波無線電話、VHF無線電話(国際VHF、双方向無線電話)、DSC(デジタル選択呼出装置)、NAVTEX、SART(レーダートランスポンダ)などの装置が用いられます。衛星通信では、静止衛星のインマルサットなどが使用され、船舶から陸上向け及び陸上から船舶向け双方に利用されます。
このようなGMDSS装置を装備しなければならない船舶は、国際航海に従事する総トン数300トン以上の貨物船及び全ての旅客船と定められています。
ここでGMDSSの主な設備を簡単に説明していきます。
・VHF無線設備
超短波の無線設備で、近距離の通信に使用されます。船舶の航行上必要な通信および遭難通報などの送受信を行うため、DSC装置(デジタルコードを使用して特定の海岸局や他の船舶を自動的に選択する装置)が装備されています。
VHF無線電話にはCH16の常時聴取が定められています。
・MF/HF無線設備
中距離及び長距離通信用として使用されます。
・NAVTEX
ナブテックス受信機は、海岸局から約400 海里内の海域を航行する船舶に向けて放送される海上安全情報(航行警報、緊急情報、気象海象警報等)を自動的に受信し、内蔵のプリンタで印字する機器です。
・SART
SART は、救助船のレーダーまたは航空機の捜索レーダーから発射された電波を受け、それに応答して自動的に同じ周波数帯の電波を発射します。これを捜索側の救助船または航空機のレーダー表示器上に12点のドットが表示され遭難船または生存艇の位置が確認できるものです。
・EPIRB
船舶が沈没する際に既定の水圧が掛かると船体から自動的に離脱して浮上し、船舶の識別符号を含む遭難信号を衛星へ送信し衛星経由で陸上の救助機関へ送られるもの。
まだ他にもありますが上述したようなものがGMDSS機器として船舶に搭載されています。
GMDSSは船舶での人命安全を守る要として機能してきましたが、航海士が通信士を兼務するようになった事や機器の操作の複雑さから誤操作が起きたりと問題もあると思います。また、昨今の通信技術の進歩により新しいシステムの導入も考えられるため船員は新しい技術に追いつくための知識と技術が求められてくると思います。
私は今後の技術の進歩に追いつくためにも、現行の機器の知識を身につける事は勿論の事、今後の技術の進歩を注視し日々勉強に励んでいきます。
日々勉強!!
引用・参考文献
1)GMDSS全世界的な海上遭難・安全システムja
2)GMDSS(海上遭難安全システム)の概要_pdf
村上 琢磨