海運業界は、経済成長、貿易の自由化、 地政学的リスク、技術革新、規制緩和など、 さまざまな要因が重なり需要の急増が起こる時にブームを迎えますが、 このブームを予測することは不可能です。歴史的にみると、このようなブームは概ね10年から15年周期でやって来ています。1997年のアジア通貨危機前、2008年のリーマンショック前、そして、現在も続いている 2020年のコロナパンデミック後の海運バブルです。
特に、ブレイクバルクを扱う海運会社は、このブームを活用するために船隊を需要が急増している国々に配船を集中させます。
そして、これらの中には、短期的な利益を狙い各航路の利益を比較し、長年サービスを維持していた航路であってもそのサービスを停止し、 より収益性の高い航路に船舶を再配置する会社が出てきます。しかし残念なことに同じようなことを考える競争相手が同様の動きをするので、 その航路の輸送需要と能力はバランスされてしまいます。 輸送需要が安定すると、高収益だった航路の収益性は低下し、 他の航路と同等かそれ以下になってしまいます。慌てて以前に放棄した航路のサービスを再開しようとしますが、 その航路の顧客は、既に別の競争相手に取られています。
荷主は、海運会社にサービスを停止されると輸送手段を失い事業を継続する事が難しくなるので、安価な運賃を求める一方で安定したサービスを重視しています。特に、大量の貨物を扱う荷主ほど、このような考えを持っています。よって、自社の短期利益を確保するためにサービスを停止した海運会社を再び利用することはありません。
経験の浅い経営者や予め任期が決まっている経営者は、短期的な利益を追求し従業員に金銭的な目標のみを課し評価する傾向があります。必然的にそのような会社は、安定航路と顧客を確保・維持できないため衰退していきます。
海運会社は運ぶ貨物を生産することはできませんが、ある国、ある港の荷主と協議し、その港に寄港する航路を作りサービスを維持し、その港を基盤とする輸出入産業を育成することはできます。それは結果的に参入障壁が高い貴重な経営資産になります。なにより時間をかけたスケールの大きい航路開発は、私たちに仕事のやりがいを与えてくれます。
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