質問:
私は船主さんから船をお借りして運航している会社の社員です。以前、荷役中にクレーンのワイヤーが切れて貨物が落下し、ツインデッキに穴が開いてしまいました。また、落下した貨物自体も損傷し、更に他の貨物にも損傷を与えてしまいました。不幸中の幸いで、人的損害はありませんでした。船主さんや保険会社さんから
聞かれたことにお答えしただけで、何をどう処理したのかよく覚えていません。起きて欲しくありませんが、万一、事故が起きた時のために、改めて事故処理の手順を教えて頂けないでしょうか。

お答え:
なぜ、ワイヤーが切れたのか?その原因によって、処理の方法が違いますので原因の究明が必要です。ここでは、下記の3つのケースに関してお答えします。

① 貨物がSWL(Safe Working Load)を超えていた
荷主が、正確に船積貨物の詳細を申告していれば、クレーンでSWLを超えた貨物を吊り上げることは有り得ません。荷主による不正申告が原因だとすれば、傭船者の船主に対する賠償責任が発生し、傭船者は荷主から損害分を回収し、それを船主に支払う、或いは、傭船者責任賠償保険で処理し船主に支払い、次に傭船者は荷主に損害賠償請求を行うことになります。通常、荷主は、このようなケースで使える損害賠償保険には加入していませんので、傭船者は損害金額を回収できない可能性があります。特に中古の設備や機械などを積む場合は、船積前の検量を厳格に行うべきです。


② ワイヤーが整備不備だった
船主が、正しく整備していればワイヤーが切れることはなかったので、船主の傭船者と荷主に対する損害賠償責任が発生し、それは船主責任賠償保険で処理されます。船主は荷主と直接関係がないので、一般的に傭船者を介して賠償が行われます。

③  荷役業者が無理なハンドリングをした
荷役業者には船主、傭船者、荷主に対する損害賠償責任が発生します。荷役業者は傭船者の雇用者なので、傭船者は荷役業者から損害分を回収し、それを船主と荷主に支払う、或いは、傭船者責任賠償保険で船主と荷主に賠償を行い、次に荷役業者に損害賠償を求めることになります。

大きな事故が起きたら、傭船者責任賠償保険会社に連絡を取りサーベイヤーを手配して、原因究明に努める、保険処理の第一歩は、原因究明、すなわち責任の切り分けです。