在来船と自動車船の各部の名称についてお話します。
まずは在来船からお話ししましょう。
在来線の貨物室は、一般的に2層構造になっています。1層目の貨物室を Tank Top と言ったり、或いは Lower Hold と言ったりします。厳密にいうと両者は違いますが、実務的にはおなじモノとして呼ばれています。Tank Top と言われるのは、1層目の貨物室の下に清水(せいすい)、燃料、バラスト水などのタンクがあるので、そのタンクの上にある貨物室というのが語源です。Lower Hold と言われるのは、Lower =下の 、Hold = 貨物室 という意味ですね。
2層目の貨物室を Tween Deck と呼びます。 Tween は Between の省略形で「~の間」と言う意味です。つまり上甲板と下甲板の間にあるスペースを指します。「テンデッキ」とわざと訛ってカッコつけて呼ぶ人もいます。Lower Hold に対して Upper Hold と呼んだり、Second Deck などと呼ぶこともありますが、 Tween deck と呼ぶ人の方が多い気がします。 この流れからなのか、2層式の在来船のことを Tween Decker と呼んだりもしますね。Twin Decker だと思っていた人がいて「Sister Ship かよ!」ってツッコまれてました。
話は変わりますが、在来船と呼ばれる所以は、在来 = 普通、ありきたり の船ということです。つまり、上部のハッチを開けて、上下の荷役方式で貨物の積み揚げを行う大航海時代の頃と変わらない船型ということですね。英語名でも Conventional = 従来の ですから意味は同じですね。
貨物室は、上下で Tween Deck と Tank Top に分かれ、船首方向から NO.1 Hold と NO.2 Hold に分かれています。したがって、NO.1 Hold Tween deck などとよぶことによって貨物室を特定することができます。また、NO.1 Hold と NO.2 Hold を仕切る隔壁を Bulk Head と呼びます。
先ほどお話した通り、在来船では貨物をクレーンで吊り上げて荷役を行います。その際、貨物をワイヤーで絞り込まないように SPREDER と呼ばれる荷役資材を使います。この SPREDER を実務では「かんざし」と呼ぶこともあります。
Tween deck で PONTOON HATCH を採用している船では、PONTOON を支える COAMING (HATCH COAMING)と呼ばれる張り出しがあります。この張り出し具合によって貨物の積み付けや荷役方法が制限される場合があるので要注意です。
在来船では、Tween Deck の Hatch Cover 上や Hatch Side 上に貨物を積載することがあります。これを ”On Deck 上に積載する” と言います。On Deck 上に積載すると貨物室に積載する場合に比べ、貨物に損傷が発生する可能性が高くなり貨物保険の適用外になるため荷主の同意が必要です。さらに、Hatch Cover や Hatch Side が貨物の重さに耐えられるか、荒天に備え十分な固縛ができるか等、慎重な事前準備が必要です。
次は、自動車船です。
自動車船は、主に自動車を専門に輸送する船なので、その構造は在来船に比べてシンプルです。自動車船は立体駐車場が船の中にあるイメージです。荷役方法は、自動車が自ら走りこむか、引っ張って出し入れするかの横移動だけです。船内への出入り口は、船の中央部にある Center Rampway と 後方部にある Srern Rampway の2つだけです。
先ほどお話した通り、立体駐車場のような構造なので基本的に各層の天井高は決まっています。しかし、Hoistable Deck (Movable Deck、Liftable Deck等とも呼びます)という上下に稼働する特殊な Deck を持つ自動車船もあります。背の低い車両を積む時は下に移動させて一層を二層に分けより多くの車両を積み、背の高い車両を積む場合は二層を一層にして一層あたりの天井高を高く設定します。
在来船と同じように各層の Deck は重さに対する平米当たりの強度が違うので、積載する車両のタイヤやキャタピラが Deck に接地する平米にかかる重量を確認し、Deck が耐えられるかどうかを確認する必要があります。
一般的に自動車船の船体は全長が長く上部構造が高いため、特に空荷状態では風の影響を受けやすく船首が流されやすいので、バウスラスターを装備しています。
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